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はじめに
税法を読んでいく上で,ときに戸惑いをおこすことは,たとえば相続税法第6条(贈与により取得したものとみなす場合−定期金)中の「定期金給付契約(生命保険契約を除
く。次項において同じ。)の定期金給付事由が発生した場合において,……」の解釈で,「生命保険契約を除く」となっているが,個人年金保険はこの規定により取り扱うことになるのではないかと思い込むことである。
わが国の年金制度は,その経営主体により公的年金と私的年金とに分かれている。 さて,これらの年金制度に伴い払い込まれる保険料・掛金や受け取り年金の税務上の取り扱いがどのようになっているかは次の(第1表)(第2表)をみていただこう。
従来,厚生年金保険のような公的年金から出る年金は給与所得の扱いとなり,民間生保各社が発売している個人年金,簡易保険から発売している年金保険,農協共済から売り出している年金共済などから出る年金は雑所得の扱いであったが,昭和62年9月の税制改正で公的年金等も雑所得の扱いになった。(所法35)。
(1)創設の趣旨と改正 生命保険契約による年金,簡保の年金保険等の個人年金については,その掛金は生命保険料控除の対象としたうえ,受け取り段階では,掛金相当額を上回る部分を雑所得(一時金として受け取る場合は,一時所得または雑所得)として課税することとされている。これらの個人年金については,公的老齢年金を補完するものとして,また,老後生活の安定をはかる自助努力を奨励する手段として,その掛金の支払段階での税制上の優遇措置を新たに設けてもいいのではないかという声があり,昭和59年度の税制改正で,生命保険料控除中の別枠控除として,新しく設けられた。
(2)所得税の個人年金保険料に係る生命保険料控除(個人年金保険料控除)の概要 平成2年度の改正の結果,個人年金保険料に係る生命保険料控除の控除限度額は年間最高50,000円(改正前5,000円)に引き上げられ,平成2年以後の所得税から適用されることになった(平成元年以前は従来どおり。)。また,支払った個人年金保険料の金額が100,000円を超える場合でも,その超える部分の金額については一般の生命保険料控除の対象にはならないこととされた。これは,控除額の大幅引き上げに伴い,それぞれの保険の目的に区分して控除を認めるとともに,制度の簡素化を図る観点から,一般の生命保険料控除とは別に控除を設けることとし,その控除限度額を超える個人年金保険料については,一般の生命保険料控除を適用しないこととしたもの。
(3)個人年金保険料控除の速算表
(4)住民税の個人年金保険料控除の概要 昭和59年度の税制改正で,個人年金保険料に係る生命保険料控除が住民税所得割についても創設され,昭和60年度分から適用されていたが,平成2年度の改正により,その控除限度額が年間最高35,000円(改正前3,500円)に引き上げられ,平成3年度分から適用されることとなった(地法34?五,同五の二)。控除額の速算表は次のとおり。控除の仕組み等については所得税と同様。
生命保険料控除の対象となる個人年金保険契約等の範囲及び要件については,所得税法第76条第4項及び所得税法施行令第211条・第212条に規定されているが,その詳細について,昭和59年8月27日付の国税庁通達により,次のような確認が行われている。
●ドル建て個人年金保険の生命保険料控除 生命保険料控除の対象となるドル建て個人年金保険の保険料を支払った場合の生命保険料控除額の計算は,「外貨表示額の邦貨換算」(所基通213─1以下)の規定で定められている為替ルートの中で外貨建て契約の円換算にあたって中心となる「対顧客直物電信買相場」(TTB)の価格を使用することとなる。つまり,ドル建ての場合は支払日の為替レートの円換算額(TTB)で計算することになる。 〔設例〕 ドル建ての個人年金保険(60歳から年額3万ドルの年金を10年間支給される)を40歳で加入。20年払込,保険料(年額)12,500ドルでドル払いした場合の生命保険料控除額はいくらか。なお,支払日のTTBは115円とする。 12,500ドル×115円=1,437,500円 したがって,対象控除額は5万円となる。
個人年金契約の年金支払い時における税法上の取り扱いを,標準的な契約タイプについて一表にまとめてみると次のようになる。
前述の第3節では標準的な年金契約について年金支払い時の税法上の取り扱いを一覧表にまとめてみたが,この第4節では所得税・住民税が適用される場合はどんな保険事故発生時においてか,贈与税が適用される場合は……,相続税が適用される場合は……といった形で年金支払い時の適用税法を整理してみた。
1.受け取り年金等に所得税・住民税が課せられる主な場合
2.受け取り年金等に贈与税が課せられる主な場合
3.受け取り年金等に相続税が課せられる主な場合
相続開始時や年金支払い開始時には,その年金保険契約の保険料負担者と年金受取人との組み合わせにより,相続税や贈与税が課税されることがあるが,そのあと,毎年支払われる年金(給与等とみなす年金は除く。)の受け取り時には,だれが保険料を負担しているかに関係なく,改めて雑所得としての取り扱いを受け,所得税・住民税が課せられる。年金継続受取人が受け取る年金も雑所得の扱いとなる(所令183?,?,所基通35−1(9))。 雑所得の扱いを受ける年金の課税所得金額は次のようにして計算される。 (1) まず,その年金の支払い開始日以後にその年金の支払いの基礎となる生命保険契約等にもとづき分配を受ける剰余金又は割り戻しを受ける割戻金の額があるときは,その年分の雑所得に係る総収入金額にこれを算入する(所令183?一)。 (2) 各年に支払われる課税される雑所得(年金)の金額は次のようにして計算する。
(注) 上式の「その年に支払いを受ける年金額」には下記のものが含まれている。
(3) 上述の(2)に示された「必要経費」は次のようにして計算する(所令183?,同82の3)。
上記の必要経費算出式を図示すると次のようになる。 ●受け取り年金額に占める必要経費部分とその算出基礎
(4) 上述の(3)の必要経費算出のための計算式中に示した「年金の支払い総額又はその見込額」の計算は,年金の種類によりそれぞれ次のようにして計算する(所令183?二,同82の3?)。 ? 確定年金(年金受取人の生死に関係なく年金の支給予定期間中,年金を支払うもの) 年金の支給総額=年金年額×支給期間
? 有期年金(年金受取人が年金の支給期間内に死亡した場合には,その死亡後の期間については年金を支払わないもの,簡易保険の定期年金がこの種類に該当する。)
余命年数表抜すい(所令82の3の別表)
? 保証期間付有期年金(確定年金と有期年金を組み合わせたもので,年金受取人が支給期間中(たとえば20年間)生存している場合はこの間ずーっと年金が支払われるが,支給期間の終了,または保証期間後(たとえば保証期間15年の場合16年目に)死亡したときは年金支払いが終了するもの。保証期間中に死亡した場合は,保証期間の残存期間の年金は年金継続受取人に支払われる。)
? 終身年金(受取人の生存中に限り年金を支給するもの) ? 保証期間付終身年金(確定年金と終身年金を組み合わせたもので,受取人の生存中年金を支給するほか,受取人が保証期間内に死亡した場合には,その死亡後においても保証期間の終了日までその支給を継続するもの)
以上述べてきた(1)〜(4)をまとめると,大要次図のようになる。
●逓増年金受給時の雑所得金額算出一覧図
〈各種の雑所得年金の具体的な支払い総額(または見込額)ならびに課税所得の計算例〉 ●有期年金を受け取った場合 条件=年金支給開始日65歳,年金支給期間10年間の有期年金,年金年額60万円,払い込み保険料300万円,受取人は男子 計算……支給期間10年,65歳男子の余命年数は15年であるから,年金の支払い総額の見込額は,両者のうち短い年数によって計算する。 60万円×10年=600万円……支払い総額の見込額 課税所得は, 60万円−60万円×=30万円……課税所得 必要経費割合……→0.50
●保証期間付有期年金を受け取った場合 条件=年金支給開始日65歳,保証期間10年,年金支給期間15年,年金年額60万円,払い込み保険料300万円,受取人は男子 計算……年金の支払い総額の見込額は,保証期間10年,65歳男子の余命年数15年のうちいずれか長い年数――この場合15年と,支給期間15年とのうちいずれか短い15年にもとづいて計算することになる。 60万円×15年=900万円……支払い総額の見込額 課税所得は, 60万円−60万円×=39.6万円……課税所得 必要経費割合……→0.34 ●終身年金を受け取った場合 条件=年金支給開始日65歳の終身年金,年金年額60万円,払い込み保険料400万円,受取人は男子 計算……年金の支払い総額の見込額は,65歳男子の余命年数は15年であるから,次のように計算することになる。 60万円×15年=900万円……支払い総額の見込額 課税所得は, 60万円−60万円×=33万円……課税所得 必要経費割合…… →0.45 ●保証期間付終身年金を受け取った場合 条件=年金支給開始日60歳,保証期間10年の終身年金,年金年額60万円,払い込み保険料は400万円,受取人は男子 計算……年金の支払い総額の見込額は,60歳男子の余命年数が19年であるから,保証期間10年といずれか長い方にもとづいて計算することになる。 60万円×19年=1140万円……支払い総額の見込額 課税所得は, 60万円−60万円×=39万円……課税所得 必要経費割合…… →0.36 ●年金受給中の本人(保険料負担者)が死亡すれば,その配偶者が生存中,年金額の半分を受け取るといった契約の場合 条件=年金支給開始時の本人年齢は60歳,妻の年齢は58歳,払い込み保険料は500万円 計算……60歳男子の余命年数は19年,58歳女子の余命年数は25年であるから,本人については最初の19年間,年金年額60万円,その後は,妻(配偶者)に対し6年間(25年−19年),年金年額30万円を支払うことが予測されるから,その年金支払い総額の見込額は次のように計算することになる。 60万円×19年+30万円×6年=1320万円……支払い総額の見込額 課税所得は, 本人の受給中……60万円−60万円×=37.2万円……課税所得 必要経費割合…… →0.38 妻の受給中………30万円−30万円×=18.6万円……課税所得 (注) 上記の計算例では,本人が死亡した時点で,妻(年金継続受取人)はその後の年金に関する権利を相続することになるから,雑所得課税以前に,その権利に対し,相続税が課せられる(第12章第4節「受け取り年金にかかる税金をその種類別で整理すると…」,ならびに同第7節「相続税法第24条と年金受給権の評価」を参照)。 (5) 上述の(4)では,年金開始時に保険料払込中に積み立てた積立配当金による増額年金もつかない年金年額が一定額の場合について,その「年金の支払い総額又はその見込額」の計算,又その課税所得金額の計算方法を年金の種類ごとに示した。しかし,年金開始時に積立配当金による増額年金の付くものや年金年額が毎年逓増していく商品が生保関連業界では数多く発売されている。そこで,これらの年金商品の「年金の支払い総額又はその見込額」の計算,その課税所得金額の計算方法について次に述べてみる。
●下記計算例で取り上げた個人年金保険の契約内容〈仮定〉 (1) 生きている限り終身にわたり年金が支払われる――年金開始後は10年保証つき終身年金。基本となる年金,積立配当金による増額年金,年金開始後の配当金による増額年金,を合算した金額が受け取れる仕組みの年金である。 (2) 毎年一定額を支払う年金(定額年金=別掲)と第一回年金額の5%相当額ずつ毎年増額する年金(逓増年金=別掲)の2種類がある。 (3) いずれの年金も年金開始後の配当金によって年金額が増額されるので,支払われる年金額は一生涯ふえつづける。
〈計算式〉
(注) 上式の「年金年額」中には,積立配当金による増額年金分を含む。
〈具体例〉田中さんの契約内容(仮定)
第1回目の年金を受け取ったときの計算
第2回目の年金を受け取ったときの計算
第2回目以降の年金額が毎年第1回年金額の5%ずつ増えるので,必要経費部分が毎年変わってくる。 〈計算式〉
●逓増年金型の年金支払見込総額の計算方法
第1回年金額…A 増加率(5%)…B 年金受取期間…N
〈具体例〉田中さんの契約内容(仮定)
第1回目の年金を受け取ったときの計算式
第2回目の年金を受け取ったときの計算 5%の増額分を計算する。 81.5万円×1.05=85.575万円
ドル建て個人年金保険の年金を受け取った場合の雑所得を計算する場合、これらの金額の邦貨への換算金額は次のようになる。 ? ドル建ての場合 ? 円換算特約が付加されている場合 ドル建ての場合の必要経費の計算上、分母(年金支払総額)は年金支払開始日の為替レートによる円換算額(TTB)とし,分子は支払日の為替レートの円換算額(TTB)を使うこととなる。
〈設例〉 ドル建て個人年金保険の雑所得の計算 ドル建ての個人年金保険(60歳から年額3万ドルの年金を10年間支給される)を40歳で加入。20年払込,保険料(年額)12,500ドルでドル払い。 (1) 支払保険料累計額 (2) 保険料払込期間中の積立配当金による増加年金分700ドル(年額) (3) 年金開始日以後に支払われるその年の剰余金0ドル(初年度) (収入金額) =3万ドル + 700ドル + 0ドル = 30,700ドル (必要経費) 最初に分数式の分母に当たる年金支払総額を計算する。 =0.82(必要経費率。小数点3位以下切上げ) ・収入金額の円換算額
●利率変動型個人年金保険の受取年金の雑所得の計算について 最近生保各社から利率変動型個人年金保険が相次いで発売されている。これらの受取年金の雑所得の計算については,これまで述べてきた年金と何ら変わりはない。すなわち,年金受取方法が確定年金であるか保証期間付終身年金であるかなど,その受け取り方法による。また,受け取る年金そのものが変動する年金については,年金支払見込総額の計算においてその変動年金額は考慮せず,年金年額にそれぞれの受取方法に応じて定められた計算方法により年金支払見込総額を算出することとなる。
生命保険会社等は生命保険契約等に基づく年金(個人年金保険契約等を含む。)を支払う際には,その年金について所得税を源泉徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに,これを国に納付しなければいけないことになっている(所法207)。
個人が個人年金保険の受給権(年金給付中又は開始されるもの)を取得した場合,その受給権が相続税や贈与税の対象となるときは,相続税法第24条(定期金に関する権利の評価―給付事由が発生しているもの)によりその受給権が評価され,課税されることとなる。
●相続税法第24条(給付事由が発生している年金受給権の評価) ? 確定年金(生死に関係なく年金の支給予定期間中,年金を支払うもの)
? 終身年金(生存している限り支払われる年金)
? 有期年金(生存を条件に一定期間支払われる年金) ? 保証期間付終身年金(その目的とされた者の生存中年金を支給するほか,保証期間内にその者が死亡したときはその死亡後においても保証期間の終了日まで継続年金受取人にその支給を継続するもの) ? 保証期間付有期年金 年金受給権の評価額=「下記AとBのいずれか低い方の価額」と「下記Cの価額」を比較していずれか高い方の価額
(注) 1年間に受けるべき年金額が毎年異なる場合(逓増払の場合)には,上記算式中の「1年間に受けるべき基本給付金+増額給付金」を次のとおり読み替えて計算する。(評基通200(1),(3))
〈具体的計算例〉 (1) 確定年金の場合 条件=年金支給期間10年,年金年額200万円,受取人(保険料負担者でかつ被保険者)は夫,年金継続受取人は妻,夫は年金受給後4年満了時に死亡した。 計算…保険料負担者であり,かつ被保険者であった夫は年金支払い開始後4年満了時に死亡,年金継続受取人である妻は,残存期間6年の年金受給権を相続したわけである。
200万円 × 6年間=1,200万円……受け取る年金総額
(2) 終身年金の場合 終身年金の評価は,上述のとおり受取人が権利を取得したときの年齢に応じて1年間に受けるべき金額に所定の倍数を乗じて算出した金額をその権利の価額としている。
=1年間に受けるべき金額 条件=契約者(保険料負担者)夫,被保険者は妻,年金受取人妻とする終身年金で,年金年額は初年度を200万円とし,年々初年度年金額の3%ずつ逓増,年金開始年齢は65歳。従って,年金開始時にその年金の権利の評価額が夫から妻への贈与額となる。 計算…1年間に受けるべき金額の計算をする。年金開始年齢が65歳であるから倍数は2倍(前述?終身年金の権利の評価の表参照)となる。 203万円×2(倍数)=406万円……終身年金の権利の価額 ●年金の支払いに代えて一時金で取得した場合の評価(相基通24−3) 前述の相続税法第24条により評価される年金受給権を取得した場合であっても,その年金の支払いにかえて一時金でこれを取得したときは,その一時金の額により評価することになっている。
●契約者貸付金等がある場合の評価 契約者が年金支払開始前に,契約者貸付や保険料の振替貸付を受けている場合または未払保険料がある場合,これらの合計額は年金の支払事由が生じたときに清算される。この清算が年金原資から控除する方法で行われた場合には,契約上の年金の額が減額されて,年金受取人に支払われることになる。
(注) 年金原資から控除された契約者貸付金等の額に相当する金額は,契約者が一時金により取得したものとして課税が行われる。 ●利率変動型個人年金保険の権利の評価 株価低迷や低金利を反映して,最近生保各社から利率変動型個人年金保険が発売されている。これらの商品は,株式等での運用実績や金利の変動により受け取る年金額が変わるもので,中には最低保証されたタイプの商品もある。
8.生命保険契約に関する権利の評価(評基通214と旧相法26条)
生命保険契約の権利評価については,「(旧)相続税法26条の評価方法は実態に合わない部分が出てきているため,評価の適正化の観点から所要の見直しを行う」との当局の強い方針により,平成15年度税制改正で廃止され,今後,個々の契約に係る「解約返戻金の額」を用いて評価することとなった。この解約返戻金の額には,前納保険料や剰余金の分配額を含み,源泉徴収されるべき所得税の額は除くこととされている(財産評基通214)。ただし,3年間の経過措置期間が設けられ,平成18年3月31日までは旧相続税法第26条の評価方法により評価することも認められている。 財産評価基本通達214で定められた「生命保険契約に関する権利の評価」は次による。 解約返戻金の額(注) (注)前納保険料の金額,剰余金の分配額がある場合は加算。ただし,解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額がある場合にはこれを差し引く。 なお,当該契約の契約者貸付金等については債務控除の適用がある。
以下,廃止された旧相続税法第26条も紹介しておこう。 (注) 民間生保各社から発売されている個人年金契約について,年金支払い事由の発生していない年金契約の権利の評価は相続税法第25条(定期金給付事由が発生していない定期金に関する権利の評価)によるのではないかと考えられるむきがあるかも知れないが,この第25条は本文カッコ書きで生命保険契約(民間生保各社が発売している個人年金契約はこれに入る。)は除くとなっているので,旧第26条(生命保険契約に関する権利の評価)により評価することとなる。
(注) 上記「払い込まれた保険料の合計金額」及び「死亡給付金額」は,それぞれ次によることになっている(旧相令4の20)。 1 払い込まれた保険料の合計金額(旧相基通26−1) ? その生命保険契約に基づき分配を受ける剰余金又は割り戻しを受ける割戻金をもって相殺された保険料がある場合には,その権利を取得した時までに払い込まれた保険料の額の合計額(その権利を取得した時までに保険料の払込期日の到来していない部分を除く。以下?,?において同じ。)にその相殺保険料の額の合計額を加算した金額 ? その権利を取得した時までに保険料の一部の免除があった場合には,その権利を取得した時までに払い込まれた保険料の額の合計額にその免除があった保険料の合計額を加算した金額 ? その権利を取得したときまでに保険金の一部の支払い(傷害特約等に基づく給付金や見舞金のように,事後の満期保険金に影響しないようなものの支払いを除く。次の2の?において同じ。)があった場合には,その権利を取得した時までに払い込まれた保険料の額の合計額に,契約保険金額のうちにその保険金額からその権利を取得したときまでに支払われた保険金額を控除した金額の占める割合を乗じて計算した金額 2 保険金額(死亡給付金額) ? その権利を取得した時までに保険金の一部の支払いがあった場合には,契約保険金額からその権利を取得した時までに支払われた保険金額を控除した金額 ? その生命保険契約に,被保険者が災害その他の事故により死亡したことその他被保険者につき一定の事由が生じた場合に保険金の割り増しをする旨の定めがある場合には,その割り増しがあったものとした場合の保険金額 ? その生命保険契約に保険金を定期金により給付する旨の定めがある場合には,その権利を取得した時において保険事故が発生したものとみなして,その保険金について定期金の権利の評価に関する規定(法24?,?,?)に準じて計算した金額(その保険金につき一時金(あらかじめ金額が確定しているものに限る。)給付を受けることを選択することができる旨の定めがある場合には,その一時金の額) 3 相続開始時までに払込期日の到来していない保険料は,その全額が前納保険料として課税対象となる(旧相基通26−1)。 4 転換後契約に関する権利の評価は旧相基通26−2による。
たとえば,夫が保険料を負担し,妻が年金受取人であるというように年金受取人と保険料負担者とが異なっている場合には,妻が年金支払い年齢に達したとき,この年金受取人は年金を受け取る権利(年金受給権)のうち,次の算式によって計算した金額に相当する部分を,保険料負担者である夫から贈与によって取得したものとみなされて贈与税が課税される。
この課税価格が贈与税計算の対象となる。 贈与税額の計算は下の「贈与税」税額速算表を使い,次の算式によって行う。 計算方法……税額=(A)×(B)−(C)
なお,この贈与を受けた年金を妻が毎年受け取る段階では,雑所得として毎年税金が課せられることとなっている。
確定年金や保証期間付終身年金契約において,年金の支払い開始後に年金受取人が死亡した場合には,残りの確定期間分や保証期間分の年金が指定された又は約款等できめられている年金継続受取人(たとえば配偶者とかその他遺族)に支払われるが,この場合,その年金契約の保険料をだれが負担していたかによって次のような取り扱いとなる。 すなわち,死亡した年金受取人が保険料を負担していた場合,新たに年金継続受取人となった者が被相続人(死亡した年金の受取人)の相続人であるときは相続によってこの継続年金を受け取る権利を取得したものとみなされ,また,年金継続受取人が相続人以外の者であるときは遺贈によって取得したものとみなされ,その継続年金の権利の評価額に対してそれぞれ相続税が課せられる(相法3?五,相基通3−45(1))。継続年金の権利の評価は前述の第7節相続税法第24条の規定による。
継続年金の支払い開始時に生じる課税関係はおおむね以上のとおりであるが,相続や贈与によって取得した年金の受給権により年々年金を受け取る場合,前述の「第5節受け取り年金額とその雑所得の金額」コーナーで記述しているとおり,雑所得として改めて税金が課せられることになっているから留意しなければならない。
●継続年金のかわりに一時金が支払われた場合の課税関係 年金開始以後,保証期間中に保険料負担者である年金受取人が死亡した場合で,残存期間の年金の支払いにかえて一時金を遺族が受け取ったときは,この一時金は相続財産とみなされて相続税の課税対象となる(相法3?五)。
〈具体的計算例〉
〈設例〉 父が保険料を負担,母のために確定年金を締結した。年金支払い開始以来,受取人である母が毎年20万円ずつ受給してきたが,この母が死亡。そうした場合にはその子Aが継続受取人となり受給することになっていた。残存支給期間は10年。この場合の課税関係はどうなるのか。 〈計算〉 この設例は,年金継続受取人として子Aが確定年金契約の権利を取得したわけである。この場合は保険料を負担した父から,その子Aへ残存期間10年間にわたり毎年20万円ずつ年金が贈与されることになるわけで,その権利は次のように評価される(相法6?)。 (1) 確定年金契約に関する権利の評価額は……
(2) 贈与により取得したものとみなされる年金評価額
したがって,120万円の贈与を受けたことをAは申告しなければいけない。 (注) 上記の掛金(保険料)の計算方法は相基通3−13,同3−14による(相基通5−3)。
〈編集注記〉 上記設例は保険料を父が負担,母が受給していた年金を,母の死亡により子Aが継続して受け取る場合,その年金に関する権利の評価額が父からAへの贈与として取り扱われることを示している(相法6?)。
・保険料負担者(契約者) 父 ・被保険者 母 ・年金受取人 母 ・継続年金受取人 子(A) こういう契約形態(設例と同じ)において,年金支払い開始前に父が死亡,その契約に関する権利を年金受取人である母が取得,続いて確定年金支払い期間中に母が死亡,継続年金受取人Aが残存支給期間中の年金に関する権利を取得すると,その年金に関する権利の評価額は,母からAへのみなし相続財産となり相続税が課税されるので注意されたい(相法3?五,相基通3−35)。
●保証期間付終身年金の年金支払開始後に年金受取人が死亡した場合 年金支払開始後,保証期間中に年金受取人(被保検者)が死亡した場合,年金継続受取人が残存保証期間中に受ける年金受給権の価額は,相続税法第24条第1項第1号の有期定期金として評価される。
11.年金開始前に契約者(または受取人)名義が変更されると… 年金開始前に契約者名義が変更された場合とは,年金の支払(給付)事由が発生していない契約について権利の移転があった場合のことで,一般に,?契約者(保険料負担者)の生存中に契約者名義が変更された場合,?契約者(保険料負担者)の死亡に伴い契約者名義が変更された場合――この2つが考えられる。
(1) 契約者の生存中に契約者名義が変更された場合 保険料負担者である契約者の死亡を伴わない単なる第3者への契約者名義の変更であるときは,その後,この保険料負担者であった契約者が死亡するか,解約あるいは年金支払いが開始されるまで,相続・贈与の課税は延期される(相法3?三,同5,相基通3−37)。 (注) 上記ケースの場合,旧郵便年金では相法3?四,同6?が根拠法となる。 たとえば,個人年金契約の保険料払込期間中に,夫が契約者(保険料負担者)である年金契約の“契約者たる地位”を,年金受取人である妻に承継した場合,その税法上の取り扱いは次のようになる。 イ) 契約者の地位が夫から妻に承継された時点で,年金契約に関する権利は移転するが,課税関係は生じない。 ロ) 妻が年金開始年齢に達したとき,妻は夫から,夫の負担した保険料に対応する部分の年金を受け取る権利を贈与されたものとみなされ,贈与税が課税される。
(注)1.年金を受け取る権利の評価額の計算はこの章の第7節相続税法第24条による。
(2) 契約者の死亡に伴い契約者名義が変更された場合 保険料の負担者である契約者の死亡に伴い,第3者への契約者名義の変更が行われたときは,新しく契約者となった者に対して,もとの契約者が負担していた保険料に対応する部分の年金の権利の評価額が相続または遺贈されたものとして相続税の対象となる(相基通3−36)。
●受取人名義が変更された場合の課税関係 個人年金契約の受取人を妻から長男に変えるというように,年金の開始前に受取人を変更しても,この段階では贈与税も所得税(住民税を含む。)も課税されない。
被保険者が年金支払い開始前に死亡,死亡給付金が受取人に支払われると,受取人には次のような課税関係が生じる。 (1) 被保険者が保険料負担者である場合 被保険者が保険料を負担していて死亡すると,死亡給付金が受取人に支払われることになるが,この場合,受取人はその死亡給付金を相続または遺贈により取得したとみなされて相続税が課せられる(相法3?一)。
(2) 死亡給付金の受取人が保険料を負担していた場合 保険料負担者が死亡給付金を受け取ると一時所得として所得税と住民税が課せられる。一時所得の金額は次のように計算する(所令183?)。
(注) 一時所得は他の所得と合算し総合課税する時点でその1/2を合算すればよい。
(3) 被保険者および死亡給付金受取人以外の人が保険料を負担していた場合 死亡給付金受取人が,保険料負担者から死亡給付金の贈与をうけたとみなされて贈与税を課せられることとなる(相法5?)。 贈与税は次のように計算される。
年金開始前に契約を解約したときは解約払戻金が支払われるが,この解約払戻金を受け取ったときには一時所得として所得税と住民税が課税される(ただし,受取人は契約者=保険料負担者である場合)。
(注) 総収入金額……解約払戻金のほかに積立配当金がはいる。 収入を得るために支出した金額……既払込正味保険料総額
なお,保険料負担者以外の者がこの解約返戻金等を受け取ると,贈与税が課せられる(相法5?)。
年金受取人が年金の受取開始後に年金の一括払を受ける場合,最初から一時金とすれば一時所得となるのに,1回だけでも年金として受け取るとすべて雑所得になるというのでは,税負担の面からみて問題がある。しかし,一時金として年金を繰り上げて受け取れば一時所得ということにすると,一時所得には50万円の特別控除や2分の1課税という特典があるため,何回かに分けて繰り上げ受給をすれば税負担が軽くなり,年金として支払いを受ける場合との差が著しくなるという問題がある。
(1) 保証期間付終身年金の場合 保証期間付終身年金は保証期間分の年金を一括払で受け取ることができるが,保証期間経過後に年金受取人が生存している場合は年金が支払われるので,一括払で受ける金額は雑所得として課税される。 (2) 確定年金の場合 確定年金は一括払を受けると,その時点で契約が消滅するので,一括払の金額は一時所得として課税される。 なお,一括払を受ける場合の雑所得あるいは一時所得の金額を計算するときに控除される金額は,「受取金額×必要経費割合」となるが,一時所得の場合は「支払保険料−それまでに受け取った年金の雑所得の金額を計算するときに必要経費とされた金額の累計額」でもよいと考えられる。
夫婦年金とは,夫婦のいずれか一方が生きている限り年金が受け取れるもので,?初めから夫婦年金として加入するタイプ,?個人年金から年金支払開始時に変更するタイプ,?終身保険などから移行するタイプがある。 〈設例〉
(1) 夫が60歳から受け取る年金にかかる税金 夫が60歳から毎年受け取る年金は,雑所得として課税される。 雑所得の金額=年金金額−年金年額(基本年金+増額年金)× (注) 年金金額は(基本年金+増額年金+増加年金)の合計額。 なお,年金支払見込額は,年金年額×夫と妻の余命年数のうちいずれか長い年数となる。年金支払開始日の夫と妻の余命年数は,夫(60歳)…19年,妻(55歳)…27年。
100万円−100万円×=78万円…………雑所得の金額
(2) 夫が72歳で死亡した場合の税金 夫に代わって妻が受け取る年金の受給権の評価額が,相続税の課税対象となります。年金受給権の評価額の計算は,次のとおり。 110万円×2倍(妻の年齢67歳に対する終身年金の評価倍率)=220万円 なお,以後妻が受け取る年金は,雑所得として課税される。
年金および解約返戻金,死亡給付金などは,それぞれ該当する税の種類により,支払者(保険会社等)には次のとおり支払調書の提出義務がある。
●所得税法に定められているもの
●相続税法に定められているもの
1.年金支払いの障害保険金の取り扱い 個人年金商品には,保険料払込期間中,災害割増特約等を付加しているものがある。被保険者が不慮の事故により所定の高度障害になったときに高度障害保険金が支払われるが,この高度障害保険金は,その支払いを受ける者と身体に傷害を受けた者とが異なる場合であっても,その支払いを受ける者がその身体に傷害を受けた者の配偶者もしくは直系血族又は生計を一にするその他の親族であるときは非課税として取り扱われる。
2.年金の支払開始前に受け取る配当金等の取り扱い ●個人年金保険の支払いが開始される前に,契約に基づく配当金を受けても,その配当金に対しては所得税も住民税も課税されない。
●個人年金保険契約に基づいて支払いを受けるべきことが確定した配当金を,保険約款等に定めるところにより保険会社等に積み立てておき,契約者から申し出のあったときに随時払いもどすこととしているものは,その積み立てを行ったときに配当があったものとして,生命保険料控除の計算上,支払った生命保険料から差し引かねばいけないと思われる(所基通76−6)。 ●保険料に充当した配当金は生命保険料控除の対象にならない
死亡保険金又は満期保険金等の年金払特約に関する税務処理については,従来国税当局の統一見解が示されていなかったが,昭和62年12月に個人の,また平成15年12月に法人の取り扱いがそれぞれ明らかにされた。
■所得税,相続税上の取り扱い (1) 保険金受取人が保険契約者(保険料負担者)である場合 ? 保険契約者が保険金支払事由発生日前あるいは保険期間満了日前に年金払特約を締結したとき 保険金支払事由発生日又は保険期間満了日の属する年の課税は不要。
? 保険契約者が保険金支払事由発生日以後保険金請求日以前あるいは保険期間満了日に年金払特約を締結したとき 受取保険金等はその年の一時所得の対象となり課税される。 年金を受け取るときは雑所得として課税されるが,雑所得の金額を算出する際の必要経費の計算は既払込正味保険総額ではなく,受取保険金等(年金基金充当額)をもとに行う。
(2) 保険金受取人が保険契約者(保険料負担者)以外の者である場合 ? 保険契約者が保険金支払事由発生日前に年金払特約を締結している場合で,保険金受取人がその特約を変更しないとき 相続税法第24条(定期金に関する権利の評価)により評価した価額に対して相続税又は贈与税が課税される。 年金受け取り時は(1)の?と同様。 ? 保険金受取人が保険金支払事由発生日以後に年金払特約を締結するとき 受取保険金額に対して相続税又は贈与税が課税される。 年金受け取り時は(1)の?と同様。
●年金払特約付養老保険の満期時課税について 上記で述べた取り扱いによれば,あらかじめ満期日前から年金払特約の付されている年金払特約付養老保険の満期時課税(一時所得)は不要といえる。
ひところ,生命保険金(死亡)を年金方式で支払う商品が相次いで売り出された。単純に被保険者が死亡したその時から10年間とか15年間,一定金額を毎年支払うというものもあれば,死亡したときに一時金を,その翌年から10年間,毎年5%増の年金を支払うというものまで,その仕組みは多様である。それだけに,相続財産としての評価方法をどうすればよいか,悩むケースにぶち当たることも多かった。 こうした一般の疑問を解消するためもあったと思われるが,当時,国税庁審理課の佐藤清勝氏が税務弘報昭和52年3月号でこの辺の取り扱いにつき親切に解説しておられる。そこで,年金に関する部分の要約(具体的計算例1と同2)を紹介する(生命保険金の非課税金額の計算など,一部数値を現行制度に変えている。)こととする。
平成13年10月から確定拠出年金法が施行された。これは,個人別に拠出される掛金とその運用益の合計額を基として,老後に給付が行われる制度である。加入者である個々人の持分が個別に勘定区分されて管理されることを前提に,原則として,加入者自らが運用を指図し運用収益を上げることを目指す点に大きな特徴がある。
1.確定拠出年金(個人型)の概要 個人型は,国民年金基金連合会が厚生労働省の認可を得て決めた個人型確定拠出年金規約を内容として,自営業者や年金制度のない企業のサラリーマンが加入する制度である。
2.掛金の取扱い 上記のように,サラリーマンの場合は月額18,000円(年間216,000円),自営業者の場合は国民年金基金と合算して月額68,000円(同816,000円)が限度となるが,払い込んだ掛金の全額が所得から差し引ける所得控除の対象となる。
3.運用期間中の課税 この制度では,加入者自ら運用指図を行うことになっているが,運用期間中に得た利子や配当などの運用益への所得税(15%),住民税(5%)の課税は行われないことになっている。
4.給付 (1) 老齢給付金 ? 年金(分割)払いの場合 受給権者が年金(分割)払いを選択して支払いを受ける場合は,所得税法上の雑所得となる。その場合の必要経費は公的年金等控除を適用する。したがって,他に雑所得の対象となる公的年金等を受け取れば,これらと合わせて計算することとなる。 (公的年金等に係る雑所得) =(年金給付額)−(公的年金等控除額) ? 一時金払いの場合 受給者が一時金で受け取る場合は,所得税法上の退職所得とみなされる。その場合の必要経費は退職所得控除を適用する。また,他に退職所得がある場合は,これと合わせて計算することとなる。 (退職所得) =(収入金額−退職所得控除額)× 退職所得控除額の計算上の勤続年数は,確定拠出年金の給付に関してはその掛金拠出期間によるが,同一人の他の退職所得収入と合算して計算する場合はその退職金の支払者の下に勤務した期間等,最も長いものを使用することとなる。
(2) 障害給付金 障害給付金については,公的年金の同様な給付金の場合と同様,所得税,住民税は課税されず,非課税扱いとなる(所法9)。 (3) 死亡一時金 加入者の死亡によってその遺族が受け取る死亡一時金は,相続税法上みなし相続財産(退職手当等に含まれる給付)として相続税の課税対象となる。この場合,法定相続人1人当たり500万円の非課税財産の適用がある。 (4) 脱退一時金 結婚などの理由で脱退一時金を受給する場合は,所得税法上の一時所得として所得税の課税対象となる(所法34)。
厚生年金など公的年金等の税務上の取り扱いは,この第12章の冒頭第1節で解説したように,昭和62年9月の税制改正により,昭和63年1月1日から従来の給与所得扱いが雑所得扱いに変わった。ここでは,実際に厚生年金など公的年金を受給したときにはどれくらいの税金がかかるか,試算してみることにする。 (1) 公的年金等の範囲(所法35?,所令82の2) ? 社会保険又は共済制度に基づく公的な制度から支給される年金(国民年金,厚生年金,公務員共済年金,農業者年金など) ? 恩給,過去の勤労に基づき使用者であった者から支給される年金(恩給,いわゆる自社年金) ? 社外積立型の企業年金(適格退職年金,特退共年金など) ? 中小企業退職金共済法に規定する分割退職金 ? 小規模企業共済法に規定する分割共済金
(2) 厚生年金保険による老齢年金は年額いくらまでなら所得税がかからないか 一般の雑所得は,収入金額から必要経費を控除した残額を「雑所得の金額」とし,これを課税対象としている。これに対して,公的年金等に係る雑所得の金額は,公的年金等の収入金額から公的年金等控除額を差し引いた額となる。ここから,各種の所得控除が差し引かれる。 (例)年額約268万円までの厚生年金(老齢年金)の受給ならほぼ所得税はかからない 条件=納税者本人は65歳以上で収入は老齢年金のみ,配偶者は70歳未満で障害者に該当せず収入はなし
(注) 配偶者が70歳以上になると,老人控除対象配偶者となり,その控除額は48万円になる。この場合,他に収入がなければ老齢年金281万円までならほぼ所得税はかからない。 上記?の老年者控除は納税者本人が65歳以上になると適用される。 社会保険料は考慮していない。
(3) 老齢年金(厚生年金)と個人年金を受給している場合の課税関係はどうなる 条件=老齢年金年額250万円,個人年金年額100万円(必要経費控除後)を受給,配偶者は70歳未満で収入なし。
●公的年金等と源泉徴収 原則として,国内において公的年金等の支払いをする者は,その公的年金等の支払いの際,次の算式により求めた所得税を徴収し,その徴収の日の属する月の翌月10日までに税務署に納めなければならない。(所法203の2) (公的年金等の支給金額−控除額)×10% (注) 所得税の定率減税について,公的年金等の受給者については原則として,その公的年金等の支払者のもとで定率減税額の控除が行われるが,最終的な定率減税額の精算は確定申告により行う。この場合,公的年金の源泉徴収票を確定申告書に添付することになっている。 上記の算式の控除額は,次により計算する。 (1)「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の提出がある人の場合 (基礎的控除額+人的控除額)×月数(支給基礎期間の月数)=控除額 ? 基礎的控除額 (イ) 65歳以上の人…公的年金等の月割額×25%+10万円(最低限度15万円) 平成16年度改正で,平成17年1月1日以後支給分より以下のとおりとなる。 公的年金等の月割額×25%+6万5,000円(最低限度13万5,000円) (ロ) 65歳未満の人…公的年金等の月割額×25%+6.5万円(最低限度9万円) (2) 人的控除額は,本人が老年者などに当たるかどうかに応じ,それぞれ次の金額の合計額 (イ) 本人…老年者(4万円。平成17年1月1日以後から廃止),障害者(2万2,500円),特別障害者(3万5,000円)。 (ロ) 控除対象配偶者又は扶養親族…控除対象配偶者(6万5,000円。平成17年1月1日以後から3万2,500円),老人控除対象配偶者(7万2,500円。同4万円),扶養親族(1人3万2,500円),特定扶養親族(1人5万円),老人扶養親族(1人4万円),障害者(1人2万2,500円),特別障害者(1人3万5,000円) (注) 厚生年金基金から支給される年金,公務員共済年金などについての控除額は,上記の算式で求めた金額から一定額が減額される。 ? 同扶養控除等申告書の提出がない人の場合 公的年金等の支給金額×25% なお,扶養親族等申告書の提出の対象となる公的年金等で年178万円(65歳未満の人は108万円)未満のものは,源泉徴収されない。 公的年金等の支払いの際控除される社会保険料がある場合には,その社会保険料は控除される。
■10年保証期間付終身年金について(その1) (1) 商品の概要と契約例(仮定) ・契約例=40歳契約,60歳年金支払い開始,男子,10年保証期間付終身年金,逓増型,基本年金額72万円,月払保険料38,664円 ・用語の解説
(2) 雑所得の具体的計算 ・第1回年金を受け取ったとき ? 第1回の年金受取額 加算年金43万円を含め 72万円+43万円=115万円 ? 既払込保険料合計額 38,664円×12(月)×20(年)=927万9,360円 ? 年金支払い総額見込額計算(第12章第5節参照) イ)60歳男子であるから余命年数は19年,従って保証期間10年より大きいから,この19年を使用して年金支払い総額見込額を計算する。 ロ)逓増する額は予め5%と定まっているため,毎年の受取額(契約年金と加算年金の合計額)は次のように計算できる。 すなわち,第1回年金額を100万円とすれば,
ハ)従って,第1回年金が115万円であれば,次のように年金支払い総額見込額は計算できる。 2,530万円×1.15=2,909.5万円 ? 雑所得の金額計算 115万円−115万円× =115万円−115万円×0.32=78万2,000円
(3) 源泉徴収税額の計算
上の式に前例をあてはめると,第1回年金年額の受取額は次のように計算される。 (115万円−115万円×0.32)×10% =(115万円−36.8万円)×10%=7万8,200円 115万円−7万8,200円=107万1,800円……年金受取額
■10年保証期間付終身年金について(その2) (1) 商品の概要と契約例(仮定) 10年保証期間付終身年金で,年金開始年齢前の配当金は積立配当とし,その元利金を年金支払い開始時に年金の買い増しにあて(増額年金),年金開始後の配当金は基本年金・増額年金とともに現金で支払う。なお,保険料払い込み満了後5年間の据置期間を経て年金支払いは開始される。 契約例=40歳契約,男性,60歳保険料払い込み満了,65歳年金支払い開始(5年据置後),基本 年金年額100万円,年払保険料40万7,000円
(2) 雑所得の具体的計算 ・第1回年金を受け取ったときの雑所得の課税対象金額の計算
・ 第2回年金を受け取ったときの雑所得の課税対象金額の計算
※ 以下,毎年の収入金額から必要経費(第1回年金時に算出した必要経費額がこの事例では毎年同額)を差し引いて課税対象金額を算出する。 |
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