Top>契約形態別>法人契約>団体定期保険 |
![]() |
|
団体定期保険とは,団体選択が可能な団体の所属員等のうち,一定の資格を有する者を被保険者とし,団体又は被保険団体の代表者を保険契約者とする保険期間1年の定期保険をいう。
平成8年に,企業が保険料を負担するこの種の団体定期保険(Aグループ保険という。)について,商品内容の改定が行われた。 <1> 企業が受け取った保険金の使途,すなわち遺族に支払われるものと,従業員の死亡に伴う企業の経済的損失に充てられるものとの区分が明確でなく,このことが様々な誤解を生じかねない原因となっていた <2> 従業員本人が保険の対象となることをあらかじめ了解していたかどうか(被保険者同意)の問題と相まって,近年,従業員またはその遺族と企業あるいは保険会社の間でトラブルとなるケースが発生した (イ) 被保険者同意確認の強化 約款上に加入資格として「被保険者となることに同意したものであること」を明記するとともに,被保険者同意の確認の方法として, ・被保険者になることに同意した人全員の記名捺印のある名簿の保険会社への提出 ・企業が従業員全員に保険契約の内容を通知した旨の企業および従業員の代表者の記名捺印のある確認書ならびに被保険者となることに同意しなかった人の名簿の保険会社への提出を行って,同意した人を被保険者として加入することとした。 (ロ) 企業の遺族補償規程に応じた保険金額の設定 企業が定めた遺族補償規程の内容に応じた保険金額の設定をする。補償規程は,次のものをいう。 ・死亡退職金規程 契約の締結にあたり,あらかじめこれらの対象規程の提出を受け,これをもとに保険金額を合理的に設定する。 (ハ) 超過付保の排除 上記(ロ)により,企業規程を上回る契約の申し込みはありえないとしても,同一企業で複数の契約をする場合もあるので,「目的を同じくする他の保険契約の状況」について,契約申込書に記載をし,超過付保を防ぐことにした。そして,万一超過付保となった場合は契約解除権を行使できるようにした。 (ニ) 保険金請求内容の遺族了知 総合福祉団体定期保険の保険金受取人は,対象規程に定める死亡退職金等の受給者すなわち遺族受け取りとしているが,被保険者の同意を得て企業受け取りとする等,契約者が別に定めることも可能にしている。これは企業が支払う死亡退職金の財源確保のために加入する場合を想定しているためであるが,企業受け取りの場合には,遺族に保険金請求の内容について了知してもらうことにした。 (ホ) ヒューマン・ヴァリュー特約 従業員の死亡による企業の経済的損失に備える「ヒューマン・ヴァリュー特約」の保険金受取人は,商品の趣旨から,契約者である企業に限定されている。
(1) 総合福祉団体定期保険(主契約) 従業員が死亡または所定の高度障害状態になった場合に,遺族および従業員の生活保障を目的とし,企業が定める弔慰金・死亡退職金等の規程を上限として,死亡保険金・高度障害保険金を支払う。 (注) 規程上,高度障害補償がないときは,高度障害保険金は支払われない。 <1> 保険金受取人 死亡保険金受取人は,被保険者である従業員の同意を得て,企業の死亡退職金等の規程に定める死亡退職金等の受給者となる。ただし,被保険者の同意があれば,受取人を企業等とすることもできる。 (注) 企業等が死亡保険金・高度障害保険金を受け取る際は,死亡退職金等の受給者・被保険者の了知が必要となる。 <2> 保険金額 企業の死亡退職金等の規程に基づく支給金を上限とし, a.年齢,報酬額,勤続年数,職種,職階等の客観基準により被保険者を組別し,その各組ごとに保険金額を一定とする方法 b.被保険者全員を同額とする方法 がある。 (2) ヒューマン・ヴァリュー特約 従業員の死亡等により発生する代替雇用者の採用・育成費用等,企業が負担すべき諸費用(企業の経済的損失)を保障することを目的とし,主契約の締結または更新の際,被保険者の同意を得て,主契約に付加する。 〈従業員の死亡に伴う諸費用の発生例〉 ・代替雇用者の採用・育成費用 <1> 保険金受取人 死亡保険金受取人は,保険契約者である企業となる。 <2> 保険金額 特約保険金額(死亡保険金・高度障害保険金)は,主契約の保険金額が上限となる(ただし,1被保険者につき2,000万円が上限。)。また,企業が特約保険金を受け取る際は,死亡退職金等の受給者・被保険者の了知が必要となる。 (3) 災害総合保障特約 従業員が不慮の事故によって身体に障害を受けた場合,または傷害の治療を目的として入院した場合,企業が定める給付規程を上限として給付金を支払う。 (注) 主契約で災害保障部分,高度障害保障部分を一括して保障するため,従来の各種特約の災害により障害・入院の保障部分を一本化し,「災害総合保障特約」とした。 <1> 保険金受取人 障害給付金および入院給付金の受取人は,被保険者である従業員となる。ただし,被保険者の同意があれば,受取人を企業等とすることもできる。 <2> 給付金額 特約給付金額(給付金計算のための基準給付金額)は,主契約の保険金額が上限(1被保険者につき1,000万円が上限。)となる。
(4) その他 <1> 契約期間 1年ごとに更新する仕組みで,契約者から解約の申し出がなければ,自動更新される。 <2> 保険金額・給付金等の変更 契約者が規程における支給額の変更などを行った場合は,毎月の契約応当日に保険金額・給付金額等を規程にあわせて増額または減額できる。 <3> 既契約の取り扱い 従来の団体定期保険契約は,平成9年4月1日以降の契約更新日から総合福祉団体定期保険への切り替えを行っている。 〈契約形態〉
(1) 法人の経理と税務 法人が負担する定期保険料(主契約保険料),傷害特約保険料(特約保険料)はそれぞれ保険金(給付金)受取人のいかんにより次のとおり取り扱われることになる(法基通9−3−5,同9−3−6の2)。
<1> 初回保険料の経理処理 初回保険料は,次のとおり経理処理を行う。(なお,次の「仮払金」勘定を実務面では省略している場合が多い。) a)初回保険料充当金の支払いとその仕訳
b)契約不成立の場合の取り扱い
<2> 次回後保険料の経理処理 次回後保険料は次のように仕訳する。
<3> 未経過保険料の経理と税務 昭和55年5月15日付「直法2―8通達」をもって「短期の前払費用」について基本通達が設けられた。すなわち,
(2) 被保険者の立場からみた税務 <1> 法人が受取人の場合 法人が負担した保険料は,課税関係を生じない(法基通9―3―5)。 <2> 被保険者の家族(遺族)が受取人の場合 法人が負担した保険料は課税関係を生じない。ただし,役員又は部課長その他特定の使用人のみを被保険者としている場合,当該保険料は,当該役員又は使用人に対する給与となる。
団体定期保険の配当金が契約者(法人)に支払われる場合,その支払いを受けた日,または,更新保険料と相殺する日を含む事業年度の益金に算入される(法基通9―3―8)。
(1) 受取人が法人の場合 <1> 法人の経理と税務 a)法人が役員又は使用人の死亡により団体定期保険の死亡保険金を受け取った場合は,その全額を受け取り時の益金に計上する。
b)法人が受け取った死亡保険金を役員又は使用人の死亡退職金あるいは弔慰金に充当すると,次のように損金に算入する。
ただし,役員の死亡の場合は,その退職金がその人の地位,在任期間,客観的状況からみて過大であれば,その部分は損金に算入できない(法法36,法令72)。 <2> 被保険者を取りまく税務 a)役員・使用人の家族が受け取る死亡退職金は,みなし相続財産として相続税の課税対象となる(相法3<1>二)。 b)弔慰金として受け取った場合は,その額が下記の範囲内であれば非課税財産とされ,これを上回ったときは,その上回った部分が退職金に該当するものとして取り扱われる(相基通3−20)。 ◎ 業務上の死亡の場合 ◎ 業務外の死亡の場合 (注) 上記のa)およびb)を上手に利用すると,死亡退職時の手取退職金額を多くすることになる。企業経営者の心掛けるべき節税常識といえよう。
(2) 受取人が被保険者の遺族の場合 <1> 法人の経理と税務 前掲の「法人を契約者とする定期保険の契約形態とその税法上の取り扱い一覧」でも示しているとおり,法人の経理には関係を生じない。 a)法人が保険金を受け取ったとき
b)役員・使用人の家族に保険金が手渡されたとき
<2> 被保険者の遺族(受取人)の税務 死亡保険金はみなし相続財産とされ,受け取った遺族に相続税が課税される。法人が負担した保険料は,被保険者が負担していたものとして取り扱われ,遺族の受け取った保険金の全額が相続財産とみなされる(相法3?一,相基通3−17)。 (注) 死亡保険金が上記のように役員又は使用人の遺族に直接受け取られた場合でも,法人の規定上,この死亡保険金を役員又は使用人の退職金として充当することが明らかな場合は,生命保険金としてではなく死亡退職金として取り扱われる(相基通3−17)。
(1) 受取人が法人の場合 <1> 法人の経理と税務
<2> 役員・使用人(見舞金受取人)の税務 役員又は使用人が受け取った災害見舞金が社会通念上,妥当な金額であれば,非課税扱いとなる(所基通9―23)。
(2) 受取人が被保険者(役員又は使用人)の場合 被保険者本人かその配偶者もしくは直系血族または生計を一にするその他の親族が受け取る高度障害保険金は,全額非課税扱いとなる(所法9,所令30一,所基通9―21)。
団体定期保険に付加される災害保障特約,労働災害保障特約等によって支払われる災害保険金,障害給付金,入院給付金等については,高度障害保険金の場合と同様に取り扱われる。
(1) 失効 失効前の保険料がすべて損金経理で支払われていたので,失効時経理処理は要しない。 (2) 復活 復活時に支払われる保険料は,通常の保険料と同様損金に算入される。
失効の場合と同様,特別の経理処理は要しない。
増額,減額後に支払った保険料をそのまま損金経理する。
<1> 給与支払いに際し,役員・使用人負担分を控除する
<2> 法人が初回保険料充当金を支出したとき
<3> 契約日に仮払金を整理する
<4> 2月目以降の保険料を支出したとき
<5> 配当金を受け取った場合 全体の受取額のうち会社受取分は雑収入,役員・使用人受取分は預り金として処理する。
<6> 役員・使用人分の配当金を分配した場合
<7> 保険金を受け取った場合 全体の受取額のうち会社受取分は雑収入,従業員受取分は預り金として処理する。 イ)受け取り時
ロ)従業員受取分を従業員へ支払う時
ハ)退職金支払い時
<8> 保険金を受け取った場合(少ないケースだと思われるが,会社経由で役員・使用人負担による受け取り分を役員・使用人の遺族が受け取った場合) イ)法人受け取り時
ロ)役員・使用人の遺族に保険金を渡す時
11.親子契約(親会社が負担する販売店の店主,使用人のための定期保険料の経理) 親会社が,子会社の役員,事業主または使用人を団体定期保険に加入させる場合があるが,この場合の親会社の経理と税金関係,また,子会社の経理や子会社の役員,事業主または使用人の税金の取り扱いは次のようになる。 (1) 保険料の支払い 親会社(法人)が子会社(特約店等)の従業員(役員及び使用人をいう。)を被保険者とするいわゆる掛け捨ての生命保険又は損害保険の保険料を負担した場合は原則として交際費として取り扱われる。しかし,特約店等の従業員(役員を含む。)を被保険者とする場合は,その負担した金額は,販売奨励金等に該当するから交際費とならない。ただし,子会社の役員だけ,または特定の使用人だけを被保険者とする場合のその負担した金額は「交際費等」に該当し,交際費等に係る損金不算入限度計算の対象となる(措通61の4(1)−7(注))。 <1> 親会社が保険料全額を負担した場合 〔親会社の仕訳〕
〔子会社の仕訳〕 <2> 親会社,子会社がそれぞれ自己の役員・使用人にかかる保険料を負担した場合 〔親会社の仕訳〕
親会社では,子会社からの保険料を受け入れて自己負担分の保険料と合わせて生保会社に払い込むことになるが,子会社分については「預り金」の処理をし,親会社の損益勘定を通してはいけない。 〔子会社の仕訳〕
(2) 配当金の受け取り 親会社が子会社分保険料の全額または一部を負担した場合,受け取る配当金は,親会社負担分に相当する配当金を親会社の益金に算入し,子会社負担分に相当する配当金は「預り金」勘定で経理処理をし,子会社へ支払うことになる。 <1> 配当金受け取り時
<2> 子会社への支払い時
<3> 子会社では,受け取った配当金を益金に算入する。
(3) 受取保険金について 役員又は使用人の遺族が保険金を受け取ったときは,みなし相続財産として相続税の課税対象となる。
(1) 出向先法人が当該出向者分の保険料を負担した場合,損金として認められる。 (2) 出向前法人が当該出向者分の保険料を負担した場合,原則として,出向前法人の損金として認められる。 (注) (1)(2)とも役員や特定の使用人のみを対象としていた場合は,それらの者の給与(報酬)として扱う。
(1) 転籍先法人が負担した場合 自己の使用人についての負担であるから,損金として認められる。12の(注)に同じ。 (2) 転籍前法人が負担した場合 転籍前法人にとっては,自己の会社を退職した者であるので,転籍者分の保険料は福利厚生費とはならず,交際費となる。ただし,退職者についても一定の基準を設けて団体定期保険を契約しているときは,この分の保険料は損金として認められるので(昭49直審3―59),転籍者分保険料についても福利厚生費として損金となる。 (注) 転籍者とは,使用人の身分関係を断ち切られ他の法人の役員または使用人として勤務する人をいう。
(1) 被保険者(配偶者・その他親族)の家族が受取人の場合 <1> 保険料の支払い 役員もしくは使用人と生計を一にする配偶者その他の親族に係る保険料の会社負担分は,保険期間の経過に応じて――つまり月払い又は年払い保険料は支払いの都度損金として認められる(法基通9―3―5)。 <2> 保険金等の受け取り 保険金等を受け取る場合の経理については,前掲の死亡保険金の項を参照のこと。 (2) 法人が保険金受取人となる場合 <1> 保険料の支払い 死亡保険金の受取人が会社(法人)である場合は,その支払った保険料の額は,保険期間の経過に応じて損金の額に算入される。法基通2−2−14(短期の前払費用)により月払い又は年払いの保険料は支払いの都度損金に算入される(法基通9―3―5)。 <2> 保険金等の受け取り 法人が受け取った保険金等は,一般の場合と同様に雑収入に計上する。
弔慰金として支払った時点で次のような仕訳を行う。
支払った弔慰金が社会通念上妥当な額であれば,損金として認められる。一方,受け取った側も非課税扱いとなる。
●退職者の家族が受取人の場合(昭49直審3−59) <1> 保険料の支払い 退職者分の保険料の負担額が一定の合理的な基準を設けて契約されておれば,法人税法上も損金として認められ,かつ,当該退職者に所得税も課せられないとされている。 <2> 保険金等の受け取り 保険金等を受け取る場合の経理については,一般の場合と変わりはない。 |
▲ページ上部へ |