Top契約形態別>法人契約>1/2損金プラン

養老保険の1/2損金プラン

養老保険(2分の1損金プラン)の契約の仕組み ■支払保険料について ■契約者配当金について ■満期保険金について 
死亡保険金について ■高度障害保険金について ■障害給付金,入院給付金について ■契約者貸付 ■保険料の自動振替貸付
解 約 ■減 額 ■払済保険への変更 ■契約転換 ■契約内容の変更

1.養老保険(2分の1損金プラン)の契約の仕組み

(1) 契約の形態

保険契約者……法人
被保険者………役員又は使用人(従業員)
受取人…………満期保険金=法人
       死亡保険金=役員又は使用人(被保険者)の遺族

(2) 加入要件

(注) 以下の解説においては,普遍的加入の要件を満たしているものとする。

 原則として,従業員の全員を対象とすることが必要。ただし,職種・年齢・勤続年数などの合理的基準によって普遍的加入と認められる場合は対象となる。
▲ページ上部へ

 

2.支払保険料について(法基通9-3-4,9-3-6の2)

(1) 法人の経理処理

? 全期払(月払,半年払,年払)の場合(「短期の前払費用」参照)

 支払った保険料の額のうち主契約(養老部分)保険料の2分の1は保険料積立金として資産に計上し,残りの2分の1は福利厚生費として損金に算入する。特約が付加されている場合は,特約保険料を福利厚生費として損金に算入する。

<仕訳例>

 月払保険料28万円(うち主契約保険料24万円,特約保険料4万円)を支払った。
借       方 貸       方
保険料積立金 120,000円
福利厚生費 160,000円
現金又は預金 280,000円

<2> 一時払の場合

 支払った保険料の額のうち主契約(養老部分)保険料の2分の1は保険料積立金として資産に計上する。残りの2分の1と特約保険料は当該事業年度対応分のみを福利厚生費として損金に算入し,残りは長期前払費用として処理する。次年度以降はその年の期間対応分を長期前払費用から取り崩し,福利厚生費として損金に算入する。

<仕訳例>

 A社(3月末決算)は,10年満期養老保険の一時払保険料1,000万円を支払った。契約開始日は10月1日。
  【初年度】
 
借       方 貸       方
保険料積立金 5,000,000円
長期前払費用 4,750,000円
福利厚生費 250,000円
現金又は預金 10,000,000円
 
  【次年度以降】
 
借       方 貸       方
福利厚生費 500,000円
長期前払費用 500,000円
 

(2) 被保険者の税務

 課税関係は生じない。法人の支払保険料は生命保険料控除の対象とはならない。

▲ページ上部へ

 

3.契約者配当金について(法基通9-3-8)

(1) 法人の経理処理

<1> 積立配当の場合

 配当金とすでに積み立てられた配当金に対する利息を,雑収入として配当の通知を受けた事業年度の益金に算入する。

<仕訳例>
 当期の配当金4万円と前期までの積立配当金に対する利息3,500円を合わせて積み立てる旨の通知を受けた。
 
借       方 貸       方
配当金積立金 43,500円
雑  収  入 43,500円

なお,積み立てた配当金を引き出した場合は,配当金積立金を取り崩す。

<仕訳例>
 積立配当金10万円を引き出した。
借       方 貸       方
現金又は預金 100,000円
配当金積立金 100,000円

<2> 相殺配当の場合

 配当金は雑収入として益金に算入するので次のような処理になる。

<仕訳例>
 保険料28万円(うち主契約保険料24万円,特約保険料4万円)と配当金4万円を相殺し,差し引き24万円を支払った。
借       方 貸       方
保険料積立金 120,000円
福利厚生費 160,000円
現金又は預金 240,000円
雑 収 入 40,000円

<3> 現金配当

 受け取った配当金の額を益金に算入する。
借       方 貸       方
現金又は預金 ×××
雑  収  入 ×××

<4> 増加保険(保険金を買い増す。)

 通知を受けたつど,雑収入として益金に算入し,同時に同額を増加保険金の一時払保険料として,2分の1を保険料積立金として資産に計上,残りを長期前払費用とし,期間の経過に応じて福利厚生費として損金に算入する。

(2) 被保険者の税務

 課税関係は生じない。

▲ページ上部へ

 

4.満期保険金について

(1) 法人の経理処理

 イ.一時金で受け取る場合

 満期保険金を一時金で受け取った場合,保険料積立金および配当金積立金(積立配当の場合)の資産計上額を取り崩し,受取満期保険金との差額を雑収入として益金に計上する。

<仕訳例>
 満期保険金等2,250万円を受け取った。保険料積立金,配当金積立金の資産計上額はそれぞれ800万円,100万円であった。
借       方 貸       方
現金又は預金 22,500,000円
保険料積立金 8,000,000円
配当金積立金 1,000,000円
雑 収 入 13,500,000円

 ロ.年金で受け取る場合(満期前に年金払特約が付加されている場合)

 法人が満期保険金を年金で受け取った場合,資産に計上されている保険料積立金および配当金積立金(積立配当の場合)のうち毎年の受取年金額に対応する金額を取り崩し,受取年金額との差額を雑収入として益金に計上する。

<仕訳例>
 満期を迎え、毎年年金を225万円ずつ受け取る。満期時の保険料積立金,配当金積立金の資産計上額はそれぞれ800万円,100万円であった。
借       方 貸       方
現金又は預金 2,250,000円
保険料積立金 800,000円
配当金積立金 100,000円
雑 収 入 1,350,000円

(2) 被保険者の税務

 課税関係は生じない。

▲ページ上部へ

 

5.死亡保険金について

(1) 法人の経理処理

 死亡保険金は被保険者の遺族に支払われるので,法人は保険料積立金および配当金積立金の資産計上額を取り崩し,雑損失として損金に算入する。

借       方 貸       方
雑 損 失 ×××
保険料積立金 ×××
配当金積立金 ×××

(2) 被保険者の遺族の税務

 死亡保険金はみなし相続財産として相続税が課税される。したがって,他の死亡保険金等と合わせて死亡保険金の非課税限度(500万円×法定相続人の数)がある。
▲ページ上部へ

 

6.高度障害保険金について

 被保険者である役員や使用人が高度障害になったことにより高度障害保険金が支払われる場合,約款の定めるところにより直接被保険者に支払われるものと,契約者である法人に支払われるものの2通りがある。

● 法人に支払われる場合

(1) 法人の経理処理

 高度障害保険金を受け取った場合,保険料積立金および配当金積立金(積立配当の場合)の資産計上額を取り崩し,高度障害保険金との差額を雑収入として益金に計上する。

<仕訳例>
 被保険者である従業員の高度障害に伴い高度障害保険金等2,000万円を受け取った。保険料積立金,配当金積立金の資産計上額はそれぞれ400万円,50万円であった。

借       方 貸       方
現金又は預金 20,000,000円
保険料積立金 4,000,000円
配当金積立金 500,000円
雑 収 入 15,500,000円

 法人が受け取った高度障害保険金を見舞金として従業員に支払った場合,原則として福利厚生費として処理する。しかし,その見舞金が社会通念上妥当な額を超えるときは,その超える部分の金額は賞与(あるいは退職金)として処理される。

(2) 被保険者の税務

 受け取った見舞金が社会通念上妥当な額であれば非課税となる。社会通念上妥当な額を超える部分は賞与(あるいは退職金)として所得税・住民税の対象となる。

● 従業員に支払われる場合

(1) 法人の経理処理

 法人は保険料積立金および配当金積立金の資産計上額を取り崩し,雑損失として損金に算入する。

借       方 貸       方
雑 損 失 ×××
保険料積立金 ×××
配当金積立金 ×××

(2) 被保険者の税務

 高度障害保険金を,被保険者本人あるいは被保険者の配偶者もしくは直系血族又は生計を一にするその他親族が受け取った場合は,全額非課税扱いとなる(所基通9−21)。
▲ページ上部へ

 

7.障害給付金,入院給付金について

(1) 法人の経理処理

 災害・疾病関係特約により支払われる障害給付金,入院給付金等は,直接被保険者に支払われる場合は,法人の経理処理は必要ない。法人が受け取る場合は,雑収入として益金に計上する。

(2) 被保険者の税務

 身体の障害に基因して支払いを受ける障害給付金,入院給付金等は非課税扱いとなる(所令30一)。
▲ページ上部へ

 

8.契約者貸付

(1) 法人の経理処理

 契約者貸付を受けた場合の経理処理は次のように行う。

借       方 貸       方
現金又は預金 ×××
借 入 金 ×××

 契約者貸付を返済した場合

借       方 貸       方
借 入 金 ×××
支払利息 ×××
現金又は預金 ×××

(2) 被保険者の税務

 課税関係は生じない。
▲ページ上部へ

 

9.保険料の自動振替貸付

(1) 法人の経理処理

 保険料の自動振替貸付の通知を受けた場合,その額を借入金として負債に計上し,その借入金による保険料については,通常の保険料と同様に処理する。

<仕訳例>
 保険料28万円(うち主契約保険料24万円,特約保険料4万円)の自動振替貸付を受けた。立替利息は,2万2,400円であった。

 
借       方 貸       方
保険料積立金 120,000円
福利厚生費 160,000円
支払利息 22,400円
借 入 金 302,400円

 自動振替貸付を受けている契約が満期を迎えた場合は,保険料積立金および配当金積立金を取り崩し,自動振替貸付金は精算するとともに,差額を雑収入として処理する。

<仕訳例>
 契約が満期を迎えたが,満期保険金等2,250万円から自動振替貸付金等が精算され,実際の受取額は1,000万円であった。保険料積立金,配当金積立金の資産計上額はそれぞれ800万円,100万円,借入金計上額は1,250万円であった。

 
借       方 貸       方
現金又は預金 10,000,000円
借 入 金 12,500,000円
保険料積立金 8,000,000円
配当金積立金 1,000,000円
雑 収 入 13,500,000円

(2) 被保険者の税務

 課税関係は生じない。
▲ページ上部へ

 

10.解 約

(1) 法人の経理処理

 解約返戻金を受け取った場合,保険料積立金および配当金積立金(積立配当の場合)の資産計上額を取り崩し,解約返戻金との差額を雑収入として益金に計上する。

<仕訳例>
 従業員の退職により保険契約を解約,解約返戻金等520万円を受け取った。この契約の保険料積立金,配当金積立金の資産計上額はそれぞれ240万円,15万円であった。

借       方 貸       方
現金又は預金 5,200,000円
保険料積立金 2,400,000円
配当金積立金 150,000円
雑 収 入 2,650,000円

●一時払の契約を5年未満で解約した場合

 金融類似商品課税により解約返戻金等と一時払保険料の差額の20%が源泉徴収される。

<仕訳例>
 従業員の退職により一時払で加入していた保険契約を4年で解約,解約返戻金等から源泉徴収税額30万円を差し引いた490万円を受け取った。この契約の保険料積立金,前払費用,配当金積立金の資産計上額はそれぞれ63万円,240万円,25万円であった。

借       方 貸       方
現金又は預金 4,900,000円
租税公課 300,000円
保険料積立金 630,000円
前払費用 2,400,000円
配当金積立金 250,000円
雑 収 入 1,920,000円

 源泉徴収税額は,申告の際に所得に対する法人税および法人住民税の額から税額控除することができる。

(2) 被保険者の税務

 課税関係は生じない。
▲ページ上部へ

 

11.減 額

(1) 法人の経理処理

 減額は契約の一部解約と考えられる。減額に伴う返戻金もあることから,保険料積立金を一部取り崩し,返戻金との差額を雑収入(または雑損失)として処理する。

<仕訳例>
 保険金額を一部減額(当初保険金額2,000万円のうち400万円)し,返戻金150万円を受け取った。減額時の保険料積立金は480万円であった。

 
借       方 貸       方
現金又は預金 1,500,000円
保険料積立金 960,000円
雑 収 入 540,000円
 

(2) 被保険者の税務

 課税関係は生じない。
▲ページ上部へ

 

12.払済保険への変更(法基通9-3-7の2)

 被保険者である従業員が退職した場合は,保険契約を解約するかあるいは名義を変更して,退職金の一部として支給することが一般的だろうが,契約の上からは払済保険にすることも可能である(従業員でない者を被保険者とする生命保険を法人契約としているという点や被保険者死亡時の処理などの問題点はあるだろうが…)。その場合,保険料の払い込みはストップするが,払い済み時点での資産計上額は満期・解約等により契約が消滅するまでそのまま資産計上を継続しても差し支えない。
 払い済み後の配当金等は通常の場合と同様に処理する。

 

13.契約転換

(1) 法人の経理処理

 役員昇格などにより契約転換し保険金額を増額した場合,転換価格を保険料積立金として資産に計上すると同時に,旧契約の保険料積立金,配当金積立金を取り崩し,差額を雑収入として処理する。

<仕訳例>
 被保険者の役員昇格に伴い保険契約を転換した。転換価格は250万円,被転換契約の保険料積立金,配当金積立金はそれぞれ120万円,4万円であった。

借       方 貸       方
保険料積立金 2,500,000円
保険料積立金 1,200,000円
配当金積立金 40,000円
雑 収 入 1,260,000円

(2) 被保険者の税務

 課税関係は生じない。
▲ページ上部へ

 

14.契約内容の変更

● 法人Aから法人Bへの名義変更

 被保険者である従業員が転籍することによって,契約者および受取人を転籍先法人に変更することがある。この場合には,解約返戻金相当額(積立配当金等を含む。)で,譲渡することになる(所基通36-37)。

(1) 法人の経理処理

 法人Aは譲渡代金を受け入れ,資産に計上していた保険料積立金,配当金積立金を取り崩す。差額は雑収入として益金に算入する。

 
  【法人A】
借       方 貸       方
現金又は預金※ ××××
保険料積立金 ××××
配当金積立金 ×××
雑 収 入 ××××
  ※無償で譲渡した場合は,「寄付金」となる。

 一方,転出先の法人Bは変更時の解約返戻金相当額を資産に(解約返戻金額を保険料積立金に,積立配当金を配当金積立金に)計上する。

 

【法人B】

 
借       方 貸       方
保険料積立金 ××××
配当金積立金 ×××
現金又は預金※ ××××
  ※無償で譲渡した場合は,「雑収入」となる。
▲ページ上部へ

(2) 被保険者の税務

 課税関係は生じない。

● 法人から被保険者への名義変更

(1) 法人の経理処理

 被保険者である従業員の退職に伴い,保険契約を退職金の一部として支給することがある。この場合,保険契約の権利の価額は解約返戻金相当額(積立配当金等を含む。)で評価される(所基通36-37)。

<仕訳例>
 被保険者の退職に伴い保険契約内容を変更し,退職金の一部として支給した。退職時の解約返戻金相当額は250万円,資産に計上していた保険料積立金,配当金積立金はそれぞれ120万円,4万円であった。退職金の支給総額は500万円であった。

 
借       方 貸       方
退 職 金 5,000,000円
現金又は預金 2,500,000円
保険料積立金 1,200,000円
配当金積立金 40,000円
雑 収 入 1,260,000円
  ※退職所得に対する所得税を源泉徴収し,差し引く必要がある。

(2) 被保険者の税務

 退職所得として所得税・住民税が課税される。

裁決事例:平5.8.24「養老保険契約に加入し支払った保険料」

▲ページ上部へ